毒餃子騒動 (8)検疫総局「待ったあ!」かける?

この件についてはしばらく「日々是チナヲチ」の出店を続けています。
 以下に、その(8)をかいつまんで紹介いたします。

 内容にコメントある方は、直接、御家人さんにどうぞ。
よたコメントなら、ここでもいいですよ。
転載もと:http://blog.goo.ne.jp/gokenin168
毒餃子】静かなる「祭」の始まり。
                中国観察 / 2008-02-14 15:57:29
 次号、詰むや、詰まざるや?……と前回のエントリーを書き終えてから、私の稼業では不可欠な睡眠導入剤を飲んでぐっすり寝て起きたら驚きました。

 詰む詰まないどころか、将棋盤がひっくり返っているではありませんか。
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 ひっくり返したのは質検総局(国家品質監督検査検疫総局)です。昨日13日午後に北京で魏伝忠・同局副局長が記者会見を開き、まず訪日した中国調査団の強い求めにより、日本生活協同組合連合会から提供された問題の製造日を含む製品を検査したところ、有機リン系殺虫剤のメタミドホスジクロルボスは一切検出されなかったと発表。

 続いて現時点までの日中双方の調査結果から、今回の事件は残留農薬が引き起こした構造的な食品安全事件ではなく、人為的な破壊行為の可能性があり、あくまでも例外的なケースと考えてよいと表明。北京五輪の食品の安全性とは全く無関係とし、

「中国政府と北京五輪組織委員会は有効かつ行き届いた五輪食品安全監視システムを構築している。オリンピックにおける食品の安全は完全に保障されている」
 と強調しました。
 一方で魏伝忠は、「河北省石家庄市当局者が、同市公安局に設置した特別捜査チームが今回の事件を職場の待遇などに不満を持つ人間の犯行、との見方を強めている」という共同通信の記事について、

「質検総局または警察当局の発表に基づいていない主観的かつ憶測的な報道であり、調査活動と民衆をミスリードするもの」

 と指摘。その上で魏伝忠は河北省警察当局で確認したものとして、1月30日に警察部門が捜査を開始してから現時点に至るまで生産工程における異常は発見されておらず、特捜チームは現在も捜査活動を行っていると報告。当局は結論が出る前に外部に詳細など如何なる情報も発表したことがないとして、一部で流れている情報は憶測の類とみるべきだとコメントしています。

 魏伝忠はさらに、中国側の事件に対する調査状況については、質検総局と中国公安部門の発表を正式なものとすると語り、

「調査活動について中国政府は断固たる姿勢で臨んでおり、打ち出される措置は有力なものであり、一人たりとも悪人を逃すことは決してなく、また一人たりとも善人を冤罪に陥れることはない」

 と表明。このほか、事件の真相究明のため日中両国による共同捜査チームの設立を提案しています。
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 ……というのが今回の記者会見に関する中国側の報道です。中国の国営通信社・新華社が2月13日付で配信した一連の記事を簡潔にまとめてみました。
        (中略)
  日本側の報道はこのあたりを。
 ●人為的混入の形跡なし ギョーザ事件で中国当局共同通信 2008/02/13/19:35)
 ●中国 人為的混入を示唆する日本の報道を否定 ギョーザ中毒事件(MSN産経ニュース 2008/02/13/21:35)
 ●中国当局、中国での混入を否定 ギョーザ事件(asahi.com 2008/02/13/21:35)
 ●中国製ギョーザ中毒:中国検疫当局、人為的な混入否定 共同捜査を提案(毎日新聞東京朝刊 2008/02/14)
 ●中国での殺虫剤混入に否定的…ギョーザ事件で中国副局長(YOMIURI ONLINE 2008/02/14/00:45)
 ●密封でも中国とは限らず ギョーザ事件で中国検疫当局(共同通信 2008/02/13/21:35)
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 さて中国側の報道について。いずれも外交部報道官定例記者会見のような「実況」型の記事ではないため、どこまでが質検総局側の発表でどのあたりが質疑応答での回答部分なのか一切不明です。記者会見の現場に居合わせていない私(素人だし)には不可解な部分が多く感じられました。日本側の報道にも不可解な部分があります。

 まあ中国側の報道からいきますか。冒頭で私は「将棋盤がひっくり返っている」と書きましたが、これは寝ぼけマナコの第一印象。仔細に眺めてみると、「詰むや,詰まざるや?」の段階まで至っていた棋譜がチャラになって振り出しに戻った、という訳ではないようです。

 質検総局の会見は「将棋盤をひっくり返した」というより「あ、その手ちょっと待った!」という性質のもの、という感想を抱きました。香ばしいです。

 まずは事実認否について断定している部分が非常に少ないことが目立ちます。「これは事実」とはっきり断定しているのは、日本の生協に対し「強く要求」して回収したサンプル(さすがは生協さん。政協の方がまだマシ?)からはメタミドホスジクロルボスが検出されなかった、ということぐらいではないでしょうか。事件そのものについては、
 ●現時点までの日中双方の調査結果から
 ●人為的な破壊行為の可能性があり
 ●例外的なケースであると考えてよい
 などと含みを残す表現に終始し、はっきりと断定していません。「中国での混入」を「否定」したとか「否定的」だとか日本側の記事のタイトルに出ていますが、新華社電にはそういう言辞は一切出てきません(私の見落としでなければ)。そのくせ「北京五輪における食品の安全性とは無関係」とか北京五輪での食の安全がいかに完璧な体制で守られているかといった「そんな聞かれてもいないことを」(記者から質問が出たのかも知れませんが)に長広舌をふるった挙げ句、

「調査活動について中国政府は断固たる姿勢で臨んでおり、打ち出される措置は有力なものであり、一人たりとも悪人を逃すことは決してなく、また一人たりとも善人を冤罪に陥れることはない」

 とか大見得切られてもこちらは唖然としてしまいます。……逆にいよいよ不安になったりして(笑)。
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 記者会見で引き合いに出されている「共同通信の報道」についても、

 ●質検総局または警察当局の発表に基づいていない主観的かつ憶測的な報道であり、調査活動と民衆をミスリードするもの。
 ●一部で流れている情報は憶測の類とみるべきだ。

 と言っているだけで「事実無根」などと明確に否定してはいないのです。当局の正式発表によるものではなく、また主観的かつ憶測的であり、ミスリードする性質だとしてはいるものの、

「事実に反する」

 と魏伝忠は一言もたりとも言っていません。新華社電を読む際には安直に翻訳してしまわないような慎重さが必要。共同電を「怪しさ満点の報道」とはしているものの、「嘘っぱち」認定は出ていないのです。

 そもそも警察の特捜チームが現在なお調査中であり「事実」そのものについての結論がまだ出ていない、ということは魏伝忠も明言していますね。

 ちなみに私の記憶違いでなければ、「警察が捜査している」「特捜チームが設置されている」ということが中国当局から正式に発表されたのはこれが初めてです。その意味では逆に中国国内メディアの多くが報じた共同電の内容を事実と認めていることになります。……と書くと話がややこしくなりますが。
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 ●【毒餃子】中国国内でも出ました「怪しいのは中国」報道。(2008/02/12)
 ……このエントリーで紹介したように、

「日本向け『毒餃子』事件に突破口、問題製品は祝日・休日に生産、中国警察当局は袋詰め・箱詰め関係者を追及」

 というタイトルで中国国内に流れた【共同電A】(仮称)には「職場の待遇などに不満を持つ」云々といった記述は全くなく、記者会見で魏伝忠が引き合いに出している記事とは全くの別物です。魏伝忠の言う、

「河北省石家庄市当局者が、同市公安局に設置した特別捜査チームが今回の事件を職場の待遇などに不満を持つ人間の犯行、との見方を強めている」

 という【共同電B】(同)は、前回当ブログが「【2】のフラグ」としたもので、実は記者会見が開かれる時点まで中国国内メディアでは一切報じられていないものなのです。

 要するに、質検総局が自ら「スクープ」して「ミスリード」していることになります。不可解ですねえ。

 繰り返しになりますが、【共同電B】を中国国内で最初に発表したのは、その記事に文句をつけている当の魏伝忠なのです。そして、すでに中国国内メディアが報じている【共同電A】の消息筋情報は、少なくとも「警察が捜査に乗り出している」「特捜チームが設置された」という点に関しては今回の記者会見で事実であることが明らかとなりました。証拠はこちら。
 ●【共同電A】“毒餃子”於節假日製造 警方嚴査包裝裝箱工序(2008/02/08/21:57)
 http://china.kyodo.co.jp/modules/fsStory/index.php?sel_lang=schinese&storyid=53616

 ●【共同電B】石家莊警方專案組懷疑”毒餃子”或為內部作案(2008/02/12/21:50)
 http://china.kyodo.co.jp/modules/fsStory/index.php?storyid=53748%26sel_lang=schinese
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 魏伝忠は警察の捜査について「結論はまだ出ていない」と言っていますから、意外にも【共同電B】が「結論」になってしまう可能性もあるのです。まことに香ばしいと申し上げるほかございません。

 まあ「結論」がどうなるかは続報待ちではありますが、今回の質検総局による記者会見、中国側の報道をみる限りでは一体何のために開いたのか首をひねりたくなってしまいます。要するに、

「野郎ども、報道管制モード突入だ!」「海外のみなさん、北京五輪で出される食品は安全ですから」と言いたかっただけ。

 なのではないかと。

(中略)
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 最後に香港の親中紙『大公報』が何を勘違いしたか誤爆です。13日の記者会見直後に電子版で流した速報はほぼ新華社テイストだったのに、今日スタンドで売られている紙媒体では何と記者会見に全く言及せず、【1】【2】フラグ2本立て、という内容になっています(笑)。

 あるいは記者会見記事がウェブサイトには出ていないだけかも知れませんが、ここに来てフラグを立てまくるというのは党中央に喧嘩を売っているとしか思えません(笑)。放送事故のようなものでしょうか?
 ●『大公報』(2008/02/14)
 http://www.takungpao.com/news/08/02/14/ZM-863448.htm
 もし本当にチクリと刺したかったのなら『南方都市報』のセンスを見習うべきでしょう。さもなくば記者会見前に報道するとか。……肝心なときにモタモタしているから、

「弾幕遅いよ、なーにやってんの!」(報道、報道)
御家人さんの「複雑でうねりのある文体」を、制限文字数の5000字以内で紹介するのはなかなかホネです。詳しくは、転載もとへどうぞ。
http://www.tokyovalley.com/yahoo_blog/article/article.php