平成経済20年史

 今回,松永太郎という人物を初めて知った。
 書評記事でスッキリした意見を述べているので引用しておく気になった。「平成経済20年史」は,まだ読んでいない。
引用元:http://www.melma.com/backnumber_133212_4405776/
引用はじめ。


◎松永太郎の本の紹介 
「書評 紺谷典子「平成経済20年史」(幻冬舎新書)」


 私は、小さな会社を継承して、もう30年ぐらいになるが、この本に書かれてあることは実感として納得できる。経済のほうで、こういう本はめったにない(経済の本は、理論尽くめで、その理論がまったく実感に訴えないものが多いのである)。

 この本に関しては、専門家はいろんなことを言うであろうが、一読者として読むと、次のことが、いまさら言うまでもないことかもしれないが、非常に印象に残る。

1.政治家や官僚、日銀など経済・金融の政策担当者の無能と無策

2.メディア(経済評論家といわれる人たちを含めて)の浮薄さと無責任

3.「日本」人の「質」の急激な低下

 バブルが始まってからこの方、素人目から見ても、なんでこんなことをするのだろう、というような政策が、いやというほど採用された。

 たとえば、やっと消費が上向き、景気が少し回復してきたと思ったら、性急に消費税の引き上げを図って、景気に冷や水をぶっかけたりする。このときには、おそれいった。また土地の総量規制とかで、土地の価格を急激に引き下げて、バブルをハードランディングさせる。

 今でも覚えているのが、土地の値段が上がると、サラリーマンが土地を買えなくなるのがいけない、と言っていたNHK「クローズアップ現代」の評論家と、それに合いの手をいれていたキャスターである(今と同じ人)。

 それを見ている「皆様のHNKの視聴者」、つまりは、多くの中小・零細企業者は、自分の家や土地を担保に銀行から借金していた。それを急に冷やされたら、どうなるか、背筋が凍りついたのである。

 案の定、銀行は担保の見直しを図り、資金回収を図って急激な貸しはがしを行い、貸し渋りがおきて、自殺者が続出した。こんなあたりまえのことが読めないまま、政策担当者も、メディアも、土地の値段が下がった、といって喜んでいた。この本に書かれているとおりである。

 日本の政策担当者、官僚やそれに乗っかっている政治家などは、年間3万の日本人が自殺しても、へと思っていないようであった(今でも、へとも思っていないようである)。

 またNHKをはじめとする、主流メディアは、自分たちで取材しないで、下請けにやらせているので、何も実態を知らないし、高給取りばかりのため、年間3万の日本人が自殺している現状を、やはり、へとも思っていないようであった。日本人がどこかの国に拉致されても、へとも思っていないのと同様である。

それが、この20年の日本である。この本に書いてあるとおりだ。

 そこへ出てきたのが、小泉と竹中の「迷コンビ」である。私などは、小泉首相が、ブッシュの前で、プレスリーの歌を歌ったとき、日本という国は、属国ないし植民地なのだ、とつくづく感じた。情けない、光景であった。

 日本は、緩やかな自殺を遂げているとしか思えなかった。

 政治家は、無策なお調子者で、官僚の手のひらの上に乗っかって、喜んでいる。あるいは、たまに頭のよさそうな人が出てくると、消費税を上げなきゃいかんなどと、途方もないことを言い出す。
メディアは、何も知らないので、オリンピックとゴルフと相撲と成金と異常犯罪の話にふけって、喜んでいる。首相が神社に参拝すれば、外国政府の意向を受けて大騒ぎだ。
戦争に負けて以来、アメリカとチャイナの政府の言うことをきかなくてはいけない、という強迫観念に陥っているのだ。
 ここで補足
 彼ら新聞記者の本来の仕事は取材対象者の話を聴くことですが、記者会見の様子などを見ていても、彼らは人に質問する機会を利用して自分の意見を言うことがよくあります。彼らは国民の代表でも、読者の代表でも、新聞社の代表でもないにもかかわらず、政治家に影響を及ぼそうとしています。これは民主主義の健全な姿ではありません。

 人文系のアカデミズムは、大量に投入されている税金(補助金)のおかげさまで、遊んでいても食っていけるので(落語学科というものもある)、とても長年の研究の成果とは思えない、お手軽な本を書いて喜んでいる人がたくさんいる(東大の人文系大学院を見よ!)。

 右を見ても左を見ても、聞いたこともない名前の大学の教授たちでいっぱいである。大学という名前が、ほとんど「ジョーク」と化しているのである(あくまでも以上は、人文系アカデミズムを言う。科学系のほうは違うようである)。

 政治・主流派メディア(NHKと朝日)・人文系アカデミズムは、お互い人をやり取りして、ある種、鉄の三角地帯を形成している。落選した政治家だの、メディアをリタイアした人は、みんな大学の教授になる。メディアのえらものは、政府御用達の審議会の委員になる。大学には、政府から大量の税金がつぎ込まれる。ぐるぐる回りの三角地帯だ。それは結構だが、誰も三万の自殺者のことを考えない。見てみないふりをする。この偽善はいい加減にしてもらいたい。

 お役人のなかには、地方だろうと中央だろうと、もちろんクビの心配がないので、年間、家族で何回、ディズニー・ランドにいけるかとか言って(本当にいる!)喜んでいる人もいる。

 この間、NHKで「白州次郎」のドラマをやっていた。見ていると、まさにイギリスのディズニー・ランドである。もってNHKの太平楽を知った思いだ。白州(という人は、よく知らないが)が、夢のディズニー・ランド、ケンブリッジに遊び、日本でもかみさんの実家の金で豪邸に住み、「とても悪い」日本の「軍国主義者=軍人」さえいなければ、この夢は一生続いたであろう、というような御伽噺である。この番組を作った人たちも、きっとディズニー・ランドに遊んでいる人たちなのであろう。「カントリージェントルマン」だそうな!(爆笑)。

 「格差社会」という、いい加減な言葉は「収入の差」というよりは、むしろ、こうして太平楽で喜んでいる人たちと、明日、首をつろうかどうしようか、と考えている人たちの間の「格差」としたほうがいいようである。

 このような変な「格差」は、かつての日本には存在しなかったし、英米のような階級社会でも存在しなかった。ヨーロッパなら、どの国でももうすでに暴動が起きている。した、とすれば、ソヴィエトのノーメンクラツーラ社会である。あるいは、今のチャイナ共産党社会である。

 今の日本は、もはやかつての日本ではない。「グローバル化」したため、つい30年ぐらい前とは、まったく異質な日本と化したのである。この本は、そのような変貌過程の貴重な記録である。
よく書いていただいたと思う。著者に感謝したい気持ちである。

 今の日本は、緩やかな自殺など遂げていない。急速な死に向かってまっしぐらである。ご同慶の至りである。

 希望があるとすれば、40代以前の、かつての日本人のDNAを受け継いでいる若い人たちであろう。しかし、彼らは、今までの日本と違う世界に生まれてきたので、魂が凍り付いている。どうか魂を解凍なさいませ。

本当は、戦争を体験した、80以上のおじいさま・おばあさまの言うことが、すばらしい。解凍するとすれば、この人たちの言葉をよく聞くことが、いいと思われる。その「間」の世代、つまり今の日本を仕切っている連中は、ぜんぜんよくないから、あまり信用しないほうがいいと(その「間」の世代の一人として)言いたい。

松永太郎;
東京都出身 
翻訳家、多摩美術大学講師、レモン画翠社長
主訳書「進化の構造」「イカロスの飛行」他。
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引用おわり。
http://www.tokyovalley.com/yahoo_blog/article/article.php