2019-05-06 【ナザレンコ・アンドリー】 日本人の改憲論議について(2019/5/3) 政治 #アジア情勢 第21回公開憲法フォーラム。 ナザレンコ・アンドリーのスピーチ(令和元年5月3日) Inaka_Andrew 2019/05/03 に公開(7分14秒) 文字起こし: ご紹介に預かりました、ナザレンコ・アンドリーと申します。私は5年前、ウクライナから参りまして、おそらく憲法改正の議論が最も活発していた時期を日本で過ごしました。なので、「平和」と「戦争」という言葉を何度も耳にしました。数年前ロシアに侵略され、一部の領土を奪われ、今なお交戦が続いているせいで毎日毎日新しい犠牲者が出ているウクライナの出身者だからこそ、どうしてもその議論に関心が向きます。護憲の方々が軽々しく脅し文句として使っている「戦争」という言葉は、私の祖国の現状だからです。 そしてその改憲に反対している方々の主張は、ウクライナが犯した過ちと非常に似ているので、強い危機感を覚えました。簡単に言えば、自称・平和主義者は何と言っていますかというと、「軍隊を無くして隣国にとって脅威にならなければ攻められない」と。「どんな争いでも、平和を訴え話し合いすれば解決できる」と。「集団自衛権を認めたら他国の争いに巻き込まれるから危険だ」と。 では、ウクライナは侵略される前までにずっと取ってきた政策と比較してみましょう。1991年、ソ連から独立した時に、ウクライナにはたくさんの核兵器と100万人の軍隊がありました。しかし維持費がかかるし、隣国に警戒されてしまうし、危険なので、ウクライナは全ての核兵器を譲りました。代わりにブダペスト協定書という国際条約を結び、自国の防衛を他国に委ねてしまいました。そして100万人の軍隊を20万人に、つまり5分の1まで軍縮しました。しかも、大国の対立に巻き込まれないように、 NATOのような軍事同盟にも一切加盟しませんでした。日本共産党の考える平和主義はまさにこれではないでしょうか。 こんな政策は素晴らしいと考えている方を是非ウクライナの前線に連れて行きたいです。戦火で燃え尽きた村の廃墟、ミサイルが落ちている中で学校の地下に隠れている子供、ハタチまでさえ生きられなかった戦没者のお墓を見せて聞きたいです。「貴方が望んでいる日本の未来はこれなのか?戦争は言葉によって止められるものなら、その言葉を教えてくださいよ!安全な日本にいる時だけは戦争のことばかり話しているのに、どうして実際の戦地に一度も平和の精神とやらを伝えに来たことないのですか?」そう聞きたいです。 私に言わせれば、「抑止力を無くして平和を得た国はない」でしょう。そして抑止力というのは物理的な物だけではありません。もし国民投票の際、何千万人もの日本人は投票所にきて、「改憲賛成」に票を入れたら、それはどういう意味しますかというと、「我々は外国によって強制的に押し付けられた法律を認めない。自分の国を自分で治めるのだ。自衛隊はこの日本を守っているように、我々も自衛隊に協力し自衛隊員の権利を守る」という意味になります。そういう強い意志を示すことこそは最大の抑止力になると私は思います。 一方では、憲法が改正されていない状況を隣国はどう受け止めるのでしょうか?「日本人って、武力をもって攻撃したら、いつまでも押し付けられたルールに大人しく従うんだ。日本の領土を奪っても、国民を拉致しても、ミサイルを飛ばしても、国際条約を破っても、何度も領海侵犯しても全く動こうとしないんだ。日本の国会に決断力がなくて、どんな危機に直面しても行動を取らず、中身の薄い議論を続けるばかりなんだ」。こういう風に思われてしまうことこそ、戦争を招かざるを得ない実態だと私は思います。 「そんなの被害妄想」だと考え、「隣国に侵略されることは非現実的だ」と考えている方もいらっしゃるでしょうが、ウクライナ人だって2014年までずっと同じ風に考えてきた訳なんです。しかし、今その平和ぼけしていた時期を振り返ってみると、「戦争が一切起こらないと考えさせることも、敵の戦術の一つであった」と私は判りました。 ところで、日本国憲法の前文に「平和を愛する諸国民」という言葉が出てきますが、私も、どんな国でも一般市民の大半は平和を愛すると信じたいです。しかし、日本の隣国の中で、権力者が国民の願いを聞いてくれる国なんてあるのでしょうか?北朝鮮にしても中国にしてもロシアにしても、独裁国家ばかりではないのでしょうか。その国々の国民はいくら平和を愛したって、権力者が戦争しろと命令したらNOと言えないです。 で、日本の野党の方々は同じ日本語を喋って同じ日本人である有権者をさえ説得できないのに、どうして全く違う国民性を持った外国人の指導者を戦争しないよう説得できると思っているのか、全くわかりません。そして議論が必要と何度も言いながらも、議論から逃げる姿勢も不思議でなりません。 国際情勢が深刻化する中で、国家の生存に関わる憲法改正問題をこれ以上先送りしていられないと思います。日本には今、歴史的なチャンスがあります。そのチャンスを掴むか台無しにしてしまうかによって、子孫は良くも悪くもどのように今の日本人を評価するか決まります。 令和と名付けられた新しい時代に、日本はやっと大和精神に基づく法令によって統治されるようになると信じたいです。そして日本は自立し、国際社会の対等な一員になることは、日本のためにも世界のためにもなるはずです。 ご清聴ありがとうございました。 「なぜ、憲法九条が生き延びてきたのか?」についての考察 朝鮮戦争の発端