お山の杉の子

 NHKラジオに「歌のおばさん」という番組があった。幼児向けの歌番組で、午前10時頃始まるのである。幼稚園に行かなかった私は、部屋の畳に寝ころんで松田トシ安西愛子の歌を聞いた。「お山の杉の子」は、そこで歌われた。こういう歌詞で、これは戦時中からの歌詞である。

1 昔 昔の その昔、  椎の木林のすぐそばに
  小さなお山があったとさ あったとさ
  丸々坊主のはげ山は いつでもみんなの笑い者
  これこれ杉の子起きなさい 
  お日様ニコニコ声かけた 声かけた
2 ひいふうみいよう いい むう な 八日九日十日たち
  にょっきり芽が出る山の上 山の上
  小さな杉の子顔出して はいはいお日様こんにちは
  これを眺めた椎の木は
  アッハハのアッハハと 大笑い 大笑い
3 こんなちび助なんになる びっくり仰天 杉の子は
  思わずお首を引っ込めた 引っ込めた
  引っ込めながらも考えた なんの負けるか今に見ろ
  大きくなって国のため 
  お役に立って みせまする みせまする

歌はここで聞ける→http://8.health-life.net/~susa26/syoka/douyou/suginoko.html
メロディと歌の背景は、これで分かる→
http://www.d1.dion.ne.jp/~j_kihira/library/others/oyamano.html

 失意の青年時代、ゆくりなくもこの歌の3番後半が、ふと口をついて出た。その後、「御国のため」どころか糊口を凌ぐありさまだった。

 「お山の杉の子」はどうなったろう。戦時中の乱伐から60年、「みどりの羽根」に象徴される植林事業も、安易な林業政策で治山も経営も破綻し、安値の外材に押されて杉植林は放置された。山林のソマ道は、往く人もなく草や灌木に埋もれている。「大きくなって国のため、お役に立ってみせまする」と決心した「お山の杉の子」が、今ではスギ花粉という花粉症の汚染源となってしまった。有為転変の人の世を嘆くのは、靖国の英霊ばかりではないかも知れない。

 身捨つるほどの祖国はありや、と詩人は問うている。いや、すでに問うてはいない。

読みづらく、少しの誤りを含むが、広範に考察している。時間ある人の我慢しての一読をすすめる
http://www3.ocv.ne.jp/~nom-sin/sugib.html