中国から襲来する大気汚染物質(黄砂と硫酸エアロゾルに注目して)

http://www.tokyovalley.com/yahoo_blog/article/article.php
 山形県宮城県にまたがる蔵王山樹氷は、冬の観光景観として有名だ。ところが、この清潔な美しささえ感じさせる樹氷から、中国由来の大気汚染物質が検出されている。
 中国の大気汚染を敏感にキャッチする樹氷
 http://www.nikkeibp.co.jp/news/eco06q4/520885/
また、中国からの黄砂の飛来が日本人に深刻な健康被害をもたらしていることも、話題になっている。次は、2006年4月8日の黄砂の飛来を写した衛星写真である。
 http://rapidfire.sci.gsfc.nasa.gov/realtime/single.php?A060980440

 2月16日、コーヒー氏は「中国から流れてきたと見られるモヤが日本列島を覆っている様子の2月6日の衛星写真」を紹介し、2月17日のコメントでこうもり氏に安否をたずねた。
 http://blogs.yahoo.co.jp/deliciousicecoffee/14044044.html
これを受けたこうもり氏は、「2月6日以降、特に過敏な(化学物質過敏症)娘が、原因不明の症状を数日間出して、ほとんど寝込んでおりました」と、記事にした。
 http://blogs.yahoo.co.jp/aquarapter/28914461.html
この件をめぐって、コーヒー氏・こうもり氏と私で2月16から18日にかけて、ひとしきり話題となったのだが、今後のために一応のまとめを残しておきたい。 



 2007年2月6日に、北九州で黄砂の大量飛散が観測されたので、2月6日の衛星写真の「モヤ」の正体は黄砂である可能性が高い。
 http://www.okadaue.com/health/e58.htm
この文章を読めば分かるように、「黄砂は大量に飛散を観測した時だけ」に「黄砂を観測した」と出るので、「黄砂の観測はありません」をそのまま信用することはできない。現状では、黄砂観測の精度は低い。
 それでも、2006年までの「過去40年間に黄砂が観測された延べ日数」が増加傾向にあるのは、次のグラフで見ることができる。
http://www.be.asahi.com/be_s/20070211/20070125TKAG0006A.html

 それでは、「刻々と変わる大気汚染の状況を知る」には、タマに手に入る衛星写真に頼るしかないのかア…とガッカリしかけると、これがあった!

「全球化学天気図」である。
 http://www.jamstec.go.jp/frcgc/gcwm/index_j.html
上で示される頁で、次を選ぶ。
 表示する物質:硫酸エアロゾル
 高度      :地表面
 日付      :2007年2月5日
これで「決定」を押すと、2月4日6時~5日0時までの硫酸エアロゾルの濃度分布が示される。
「もどる」を押して元の画面に戻り、順に日付を6・7(この画像が最も衝撃的)・8日と押して濃度分布の変化を見る。
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 この画像はカラープリントできる。私は画像をアップできる技術がないのでここに提示できないが、以下に硫酸エアロゾルの地表の濃度分布の変化を報告する。

2月4日:6:00-12:00.華中広域に4000単位の濃度が出現、1000単位が九州へ流れる。
  5日:華中に3000-4000単位の濃度が消長し、1000単位は日本列島に流れる。
  6日:6:00-12:00.華中に5000を越える最大の濃度域が出現、0:00-6:00までに日本の東北地方南部
     から北九州を2000単位が覆い、18:00より後に2000単位の濃度域は当方海上へ流れ去る。
  7日:6:00-12:00.上海周辺に狭い4000の濃度域があり、2000の濃度域が九州を覆う。その後も、
     24:00まで九州は1000単位の濃度域にある。
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 これで分かるのは、2月6日に、「中国で発生した、地表で硫酸エアロゾル2000単位以上を含む気団」が、日本列島(宮城・山形~北九州、九州全土は7日)を通過したことである。

 「6日」で「高度1Km」を選べば、5日18時・高度1Kmで、4000単位の硫酸エアロゾル気団が北陸地方能登半島上空に到達したことが分かる。東経・北緯の数値を細工すれば、拡大図は可。
 硫酸エアロゾルは当然風に流されるが、「風向」は最後の確認で表示した方がよい。始めから風向きを表示すると、図が錯綜して判りにくい。

 ここで硫酸エアロゾルを選んだのは、「6日の事象」を理解するのに分かりやすかったためで、他の物質については、まだ私は調べていない。硫酸エアロゾルは、次のような物質と知られている。
 石油・石炭の燃焼→2酸化イオウ(亜硫酸ガス)→硫酸エアロゾル酸性雨の原因物質)
 「中国から日本へ流れる硫酸エアロゾルの分布(図3.東アジアの硫酸エアロゾルの分布)」は、次に示される。
 http://www.pref.nagasaki.jp/eiken/taiki/acid%20rain.html
エアロゾル」の説明は、次にある。
 http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=179
 「硫酸エアロゾル」についての説明は、次の「2.大気汚染物質(a)二酸化硫黄」にある。
 http://www.nihonkaigaku.org/04f/i041016/t4.html

 ここまで調べてくると、日本の酸性雨の原因物質である硫酸エアロゾル(イオウ酸化物)の発生源は全てが中国大陸と思えてくるが、そうではない。

 1995年の推定データでは、以下となる。
1位:中国               49%
2位:日本の工場・自動車など   21%
3位:阿蘇山など日本の活火山  13%
4位:韓国               12% 
 次のHPのいちばん下の「日本に降ってくるイオウ酸化物の発生源」をクリックすると、1995年の円グラフが表示される。
 http://www.nies.go.jp/nieskids/main2/sanseiu.html

 最近のデータは未見だが、「中国を発生源とする硫酸エアロゾル(イオウ酸化物)」は、現在では60%以上と予想される。
それは、1995年以降の中国の経済成長率と、「全球化学天気図」で見た「中国を発生源とする圧倒的な硫酸エアロゾルの襲来」を根拠に、考えられることである。
 中国の2002年のGDPが「1995年にに比べて約1.7倍増加している」ことが、次にグラフで図示される。
http://eri.netty.ne.jp/honmanote/kyozai/economy/006future/1.htm
また、化石燃料の燃焼で放出されるのはイオウ酸化物(最終的に硫酸エアロゾルになる)と共に窒素酸化物がある。「窒素酸化物の排出量は日本はほぼ横這いにあるが、中国での増大は極端である」ことが次の「図3」をクリックすると分かる。
http://www.jamstec.go.jp/frcgc/jp/press/041206/index.html
イオウ酸化物の排出量は窒素酸化物の排出量にパラレルであろうから、日本の酸性雨被害の「増加」は「中国のせいである」と言うのは妥当な結論だ。

 まとめ
1)コーヒー氏紹介による「読売新聞のアクア衛星写真による2007年2月6日の大陸から日本を覆うモヤ」は、「北九州での黄砂の大量飛散」を根拠に、黄砂である可能性が高い
 (断定できない原因は、各方面にモヤの正体を確認しなかった読売の報道姿勢にある。NASAは「黄砂に似た」と発表したようだが、気象庁は「黄砂を観測した」と発表しなかった。読売は気象庁の「黄砂観測のお粗末さ」を知らなかった。そこで、NASAの指摘する「中国で進行する大気汚染との関連性」を他人事のように述べたまま、表現に困って「モヤ」と呼んだようだ。まさか、「春霞」でもあるまいに…)。

2)中国で発生した「硫酸エアロゾルを高濃度に含む気団」が、2月6日に日本列島を通過した。

3)2)を確実として「中国由来のその他の大気汚染物質(黄砂を含む可能性が高い)」が、気流の関係で2月6日に日本列島を通過した。

4)2月6日から、こうもり氏の娘さんが寝込んだのは、3)が原因と考えるのが妥当であろう。前掲のこうもり氏のブログに表れる、こうもり氏・karyudo氏・oansb氏とその息子さんの体調不良も同じ原因が考えられる。

5)中国で発生する大気汚染物質は確実に日本を襲っており、
         国土の保全(動植物・建物・文化財などへの悪影響)や
         国民の健康(黄砂アレルギー・ぜんそく・免疫低下・発ガンなど)に、

         目立たないが、長期的に深刻な害を与えつつある。=


 蛇足
「中国の公害情報」を日本に伝えることについて、日本のマスコミは熱心ではない。特に、朝日・毎日やNHKが「中国の手下」であるのは、ウンザリするほど分かってきた。例の「日中記者交換協定」のためだ。最近では、中国に辛かった産経も、なにやら甘くなったような気がするのは、ホントに気のせいなのか?
 今回、日本と中国関係の気象情報をネットで検索すると、気象学者の様々な情報が公開されているのを知った。日本の気象学研究者にとって、中国の大気汚染は昔からの問題だったのだ。
 でも、それにしては我々シロウト国民への伝達・解説・教育努力が足りないのではないか?
 次は、この問題で気になることを書いてみたい。