中国の砂漠化と環境汚染の深刻さ

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 「5月も末だし、そろそろ黄砂の季節もオシマイだろう」と思っていた。ところが、2007年3月上旬
に初めて黄砂の予報アニメーション観測を見て以来、今までに見たこともないような大きさの黄砂嵐が
5月24日に予報されていました。「黄砂嵐」とは、私の勝手な造語で、上の図の赤い部分を表しています。

 とりあえず、上に予報図を貼っておきます。
26日には、日本を襲う予報が出ています(24日午前9時現在)。この図のようになれば、風の弱い
上海から華中にかけて、黄砂が降るでしょう。


 前回の「黄砂の飛来は増えている?」は、主に「自然現象としての黄砂の飛来」に焦点をあてまし
た。ところで、今日の産経新聞「正論」欄に、松本健一(作家・評論家・麗澤大学教授)の評論が載っ
ていました。

表題・中国の砂漠化と環境汚染の深刻さ

副題・工業化より健康守る水資源整備を

 これは、「環境破壊と中共の政策」という人為的側面に焦点をあてています。
そこで、全文を以下に紹介します。
 耕地の減少で黄砂が激化

 中国では、その急激な経済発展、工業化、人口の都市集中にともない、毎年耕地が7%減少してい
る。この事実を証明するかのように、国土資源省は4月13日、国内の耕地面積が約3067平方キロ
減ったと発表した。
 いや正確にいえば、耕地は都市近郊農地の工場用地や住宅地への転用によって、約6740平方キロ
減少したのである。ただ、新たな農地開発などで約3673平方キロ耕地が増えたので、国土資源省発
表のように、3067平方キロの減少になったのだ。
 もっともその新たな農地開発というのがくせものである。その多くは、内モンゴル自治区などの草原
を遊牧禁止にし、農耕地に転用したものである。
 だが、この遊牧用の草原は表土が10cm程度しかない。その下は砂漠である。それゆえ、表土を耕
すと、2,3年で砂漠化してしまう。この砂漠化が近年、日本や韓国への黄砂の大量飛来の原因にほか
ならない。
 黄砂現象は、中国西・北部からの一種の季節風とみられて、中国ではこれまで問題視されることがな
かった。ところが、7年前からはるか南方の上海でも黄砂が確認されるようになった(入力者、註・
これは「2000年のことになる」)。しかも、今年は重度汚染をともなっていた。上海中心気象台が発表
した3月下旬から4月初旬の汚染データでは、上海における黄砂の大気汚染は3月29日から4月1日
までは軽度汚染だったが、翌4月2日からは一気に重度汚染になったのである(入力者・註「この黄砂
は日本にも降った」)。

 健康被害起こす重度汚染

 重度汚染とは、空気中に浮遊する砂や汚染物質の量が多く、呼吸器疾患や肺損傷を引き起こすので、
外出禁止が勧告される状態である。視界不良などではなく、健康被害が懸念されるからだ。
 ウルムチは、砂漠地帯である新彊ウイグル自治区にあり、冬は乾燥がきびしいはずなのに、気象台に
よれば、1週間連続で霧が続いたという。これは霧というよりも、工場や自動車の排気ガスがスモッグ
となって盆地全体を覆って状態のことだろう。
 昨年の冬、私がウルムチに滞在した時も、高台にある公園から町全体を見下ろしても、スモッグが町
並みをかすませているほどだった。毎朝降る少量の雪や霜はやや灰色おびており、冬の間地上に積もっ
た40~50cmの雪は真っ黒に染まっていた。
 このような排出ガスや工場廃棄物を巻き込んで黄砂が北東のみならず、華東地域や上海にまで襲来す
るわけだから、汚染物質の浮遊割合も高まらざるをえない。中国では、個体産業廃棄物の累積量は80
億トンに達しており、これによる有害物質の浸食土地は、14万ヘクタールに達しているといわれる。
 私はこの「正論」欄で、11年前に「中国の黄河に水がない」(平成8年8月17日付)と書き、
3年まえに「『雲』をも奪い合う中国農業の現実」(同16年8月30日付)と書いた。それはしか
し、おもに水不足や食糧問題、そうして農業の危機の兆候ととらえて、警告を発するものであっ
た。

 飲料水に苦しむ3億人民

 だが、それらはいまや、環境汚染や中国全土の砂漠化の問題に連動している。黄河に水がなく、断流
現象が深刻化しているばかりか、その水質が極度に悪化しているのである。何しろ全国661の都市の
うち、半数近くの278都市が汚水処理施設を持っていない。黄河のみならず、長江、それに黒竜江な
どにも有害化学物質が大量に流れ込んでいる。
 中国はこれら大河があるため、水資源が豊富にあると錯覚されている。しかし、新華社の報道では、
中国の一人あたりの水資源は「世界平均の3分の1」である。その水資源小国の河川や湖沼が、汚染
物質のたれ流しに苦しんでいる。河川の7割以上、都市部の河川に限れば9割以上が汚染されていると
いうのだ。共産党の機関誌「人民日報」でも、安全な水を飲めない人は2000年に3億7900万人に
達し、現在でも3億を大きく越えている。
 「南水北調」という中国の国家プロジェクトがある。水資源不足に悩む北方に、南方(長江水系)
から水を送る、というものだ。しかし、その南方の水も、近年の工業化、人口の都市集中により汚染が
はげしい。それに、湖北省などでは水が原因の肝炎が多発しているという。

 西・北部の砂漠化と、東・南部の水質悪化や環境汚染こそが、国家プロジェクトによって解決される
べき問題の本質なのではないか。