「中国・韓国発」光化学スモッグ

 今年の5月8日から9日にかけて、日本で光化学スモッグが広域で観測されました。その発生の動向をネット・データから追ってみます。
図は、上から図1。
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図1 7日の午後から夜中にかけて、中国・韓国に高濃度の窒素化合物(窒素酸化物)の汚染気塊が発生・蓄積

単位ppbvって、なに?:1ppbvは、体積比にして10億分の1を表す

出典「全球化学天気図」→http://www.jamstec.go.jp/frcgc/gcwm/index_j.html
以下、同様。
 窒素酸化物(NOx)(ノックス)や炭化水素(HC)が、オゾン生成の原因物質。
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図2 それが日本へ流れてきて、8日朝からの紫外線に当たってオゾンを発生

 オゾンは、光化学オキシダントの主成分(90%以上)。
 日本が晴天(気温25℃以上、日照2時間半以上)で風が弱いなどの気象条件が重なると、大気中の光化学オキシダントが拡散されずに高濃度になる。
 光化学オキシダントが高濃度になると、光化学スモッグが発生。
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図3 8日、日本で光化学スモッグ発生

図中の大赤丸:「光化学オキシダント注意報発令濃度(0.12ppm)」かそれ以上。
 人の健康や農作物・森林に害を与える。
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図4 8日の午後から夜中にかけて、中国・韓国に高濃度の窒素化合物の汚染気塊が発生・蓄積

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図5 それが日本へ流れてきて、9日朝からの紫外線に当たってオゾンを発生

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図6 9日、日本で光化学スモッグ発生

 ただし、9日の光化学スモッグは、日本の大都市圏(東京・名古屋・大阪)でも多発しているので、それらは日本産の排気ガスなども発生源になったと考えられます。

 2007年5月8~9日の日本における光化学オキシダント濃度の分布変化は、次で「動画として」見ることができます。画面左上の「ストップ」「再スタート」をお使い下さい。
新潟県島根県長崎県大分県熊本県の海岸部や長野県など、国内近隣には大きな発生源が考えられない地域にも、高濃度の光化学オキシダントが観測されています。
 http://www.nies.go.jp/pmdep/ctype/result/ox200705/shiryo1.html

5月21日発表の「2007年5月8、9日の広域的な光化学オキシダント汚染について」
 まだ読んでいませんが、そのうち読むつもりで、備忘録として記録。
 http://www.nies.go.jp/whatsnew/2007/20070521/20070521.html

この記事の「資料3」には、地上~450mまでのオゾン濃度の動態が、アニメーションとして示され、越境汚染の実態を実感することができます。

 今日(2007/5/30)の産経新聞の「産経抄」を引用しておきます。
新緑が山や町覆い尽くすさわやかな梅雨入り前のこの時期、運動会を開く小学校も少なくない。3日前の日曜日も全国各地で子供達の歓声が響いたが、北九州市では晴天にもかかわらず、85もの小学校が運動会を中止した。
▼公害対策が進み激減したはずの光化学スモッグが発生したのだ。「目がチカチカする」「のどが痛い」と訴えた子供らは362人にのぼったという。この10年、1度も光化学スモッグ注意報を出したことがなかった北九州市は、4月26日以来、立て続けに4度も発令した。
▼九州だけではない。今月9日には20都道府県以上で観測され、新潟県では、昭和47年の観測開始以来、初めての注意報が出された。異常事態に北九州市の当局者は「原因はわからない。とにかく注意報が出れば外出をひかえてほしい」と言うが、犯人は特定されつつある。
▼福岡県の麻生渡知事は、きのうの会見で「原因は中国大陸にあるとみられ、発生源を科学的に究明し、原因が特定されれば、中国側に環境対策を求めたい」と明言した。経済成長で急激に増えた中国の工場の煙突から排出される汚染物質が、西風に乗って九州北部や日本海側にばらまかれている、というわけだ。
▼「風が吹けば桶屋がもうかる」ではないが、「西風が吹けば薬屋がもうかる」ではしゃれにもならない。スモッグとともに黄砂の被害も西日本を中心に広がりつつある。放っておいては日中両国民の健康に取り返しのつかない悪影響を与えかねない。
▼まずは、「公害輸出国」に全力を挙げて公害対策に取り組むよう約束させるのが先決だ。(後略)
産経抄」内容関連記事(5月31日追加)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/local/fukuoka/20070530/20070530_022.shtml
http://www.tokyovalley.com/yahoo_blog/article/article.php