21世紀は中国の世紀か―大気汚染など追及できない独裁体制―(1)

 2007年10月10日 産経新聞「正論」《シリーズ日中国交正常化35年》より
 慶応大学名誉教授 中村勝範「21世紀は中国の世紀か」を紹介します。

 2010年代に日本抜く?
 中国の経済成長が好調であるということから「21世紀は中国の世紀」という声がある。
 昨年の中国の国内総生産GDP)はアメリカ、日本についで世界第3位である。日中両国の経済成長率が現状のまま続けば、2010年代の中頃には中国のGDPは日本を抜くといわれている。
 中国経済の急成長は他面において自然破壊、環境汚染、格差の超拡大を伴い、その害は世界に及んでいる。
 わが国もまた高度成長期には「21世紀は日本の世紀」と得意であったが、環境破壊、公害患者を続出させた。
 幸いにして、わが国は民主主義国家であった。汚染水をたれ流す企業を追及する言論の自由があった。林立する煙突から吐き出すスス、微粒子を大きく写して知らせる報道の自由があった。公害病の根源に迫る大衆集会、抗議デモを展開できる行動の自由があった。他方、中央の議会壇上で為政者の監督責任を追及する野党があった。公害問題を取りあげれば票になることを知った与党は、野党に負けじと公害の元凶である企業と企業に甘い自党為政者に噛みついた。
 ひるがえって中国である。
 今年3月、温家宝首相は全国人民代表会議での政治活動報告において、貧しい者でも買える住宅を整備し、農民が汚染されていない水を飲めるようにし、農地収用で立ち退きなどによる民衆の権利侵害を禁じることを保証する、と「和諧社会」の構築を提唱した。
 言葉は明快であったが、
なにひとつ実現されなくとも中国には公約違反を追及するマスメディアがない。野党は存在しない。大衆抗議は官憲により蹴散らされる。すなわち共産党独裁国家である。
(続)
http://www.tokyovalley.com/yahoo_blog/article/article.php