温暖化は生態系をどう変えるか?

http://www.tokyovalley.com/yahoo_blog/article/article.php
 国立環境研究所のHPに、この表題について分かりやすい説明がありましたので、紹介いたします。

 以下、特に断らない限りの出典:http://www.nies.go.jp/escience/ondanka/ondanka02/lib/f_02.html

温暖化の自然生態系への影響

温暖化の影響は、人間社会よりも動植物にまず現れます。動植物の生息域が高緯度方向や高地へ移動するのにともなって、生態系にどんな変化が出てくるのでしょうか。その代表的な事例を紹介しましょう。

 世界の植生分布が変化
 陸上の植物は、温暖化の影響をどのように受けるのでしょうか。南限や北限といった成長限界が高緯度方向に、高山・山岳地帯ではより高い場所に移動するため、植生の種構成が変化すると予測されます。
 温暖化にうまく適応できる植物もあるでしょうが、ほとんどは温暖化に追いつくことができません。森林を構成する樹木の移動速度は4~200Km/100年のオーダーであるのに対して、温暖化はもっと速い速度で進むと見積もられているからです。
 在来種が適応できない地域では、より適応力のある植生に取ってかわられ、例えば外来種帰化植物)の侵入といった影響が予測されます。

 本の森はどうなるのでしょうか
 日本は南北に約2000Kmに長く伸びた列島です。そのため、北の亜寒帯から南の亜熱帯に至る多様な気候帯をもち、森林植生も北の針葉樹林帯(エゾマツ・シラビソなど)から南の亜熱帯林(ヤシ・タコノキなど)まで、多様性に富んでいるのが特徴です。平均気温が3~4℃上昇したとき、日本の森林はどう変化するでしょうか?それを示したのが次の図です。
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わが国に広く分布するブナ林(落葉広葉樹林)は冷温帯の代表的な森林です。保水力が高く、大型動物の住みかでもあり、最も豊かな自然生態系をつくっています。約4℃気温が上昇すると、このブナ林の約90%が消失すると予測されています。
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ブナ林の分布

(A):現在のブナ林の分布
(B):現在の気候条件によるブナ林の分布確率
(c):100年後に予想される気候変化シナリオを採った場合のブナ林の分布確率

出典:Matsui, T. et al.(2004):Probability distributions, Fagus crenata forests following vulnerability and predicted climate sensitivity in changes in Japan. Journal of Vegetation Science. 15:605-614.
引用もと:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-03-19/2006031914_03_0.html

 また、現在の日本の森林は人工林が40%以上になっています。温暖化すると、スギやヒノキの造林地の環境がブナ帯からシイ・カシ帯(常緑広葉樹林)に移り、造林地で競争する樹種が常緑樹に変わると予測されています。

 日本の生態系に現れてきた大きな変化
 近年、森に住むニホンジカニホンザル・イノシシなどの大型哺乳動物の生息分布域が拡大しています。これは、温暖化によって積雪量が減少したり降雪期間が短くなり、野生動物の生存率が高くなったためと考えられています。一方で、野生動物による作物被害が多発するようになり、人間社会との摩擦も増えてきました。
 日本の生態系に現れているさまざまな変化を、次の表にまとめてみました。
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また、高山植物への影響を示すものとして、北海道のアポイ岳に咲く稀少種ヒダカソウの減少を紹介します。
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ヒダカソウの生育地の山麓側にはハイマツが生えていますが、温暖化の進行にともなうハイマツの上昇が観察されています。このままでは、30年後にはヒダカソウは消滅する可能性もあります。

 以上、引用終わり。
 アポイ岳は、日高山脈の南端にある標高810mの山。標高が低い割には地質が特殊で、高山植物の宝庫として有名です。ヒダカソウはそこの特産種。
 アポイ岳とヒダカソウについて
 http://fd2001.sci.shizuoka.ac.jp/~fujisan/apoi/apoi.htm
近縁種にキタダケソウがありますが、どちらも私は見たことはありません。アポイ岳は標高が低いから、ハイマツ帯が稜線を覆って草地がなくなると、ヒダカソウは生育地を失うということですね。

 同様なことは、ライチョウにも言えます。ライチョウはハイマツ帯に住むのですが、温暖化でハイマツ帯が上昇し(生息地が縮小し)、なわばりが失われるというものです。もう一つは、サル・シカなどの大型動物が高山帯へ進出したことがあります。南アルプスライチョウは、25年前の40%以下(284羽)に減っています。温暖化で最南端の生息地・南アルプスから、次いで北アルプスから、ライチョウが「蒸発」する危機にあります。
 私は、北アルプスの焼岳と新潟県火打山ライチョウを見たことがあります。火打山(頸城山地)のハイマツ帯は北アルプスほど広くありませんから、南アルプス同様の差し迫った「絶滅の危機」が危惧されています。
 ライチョウの生息地について
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%81%E3%83%A7%E3%82%A6
今年、1月4日の産経の連載記事「生きもの異変・温暖化の足音」では、
日本アルプスに生息するライチョウは「25年前では約3000羽。それが最新の調査では1670羽になっています」と信州大・中村教授は言っている
とあります。ウィキの内容と少し違いますね。