温暖化すると日本の植生帯はどうなる?(2)森林植生

http://www.tokyovalley.com/yahoo_blog/article/article.php
 温暖化によって、日本の森林植生は具体的にどう変わるのか?について、
天野・鳥居・松本(1992)地球温暖化によるブナ林分布の変化
から引用します。
出典:http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/kouho/seika/1992/r17.html

 ブナ林分布が気温の上昇によって変化した経緯は,紀元前12,000~6,000年にもあり,花粉分析で当時の分布移動速度をみると,せいぜい年間150mであった。これは50年間で7.5km移動するだけであり,いま予測されている気温上昇の速度からみれば,ほとんど移動できないと考えてよい。シイ・カシ林の分布の移動についても同様の結果を得た。
 そこで,約3,000の全国の市町村を単位とし,わが国の代表的な広葉樹である
ブナ,シイ・カシが優先している地域を調べたところ,図1のようになった。
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これと各市町村の月別平均気温,雨量,積雪,温量指数,寒さの指数といったデータを用い、判別分析により気候からみてブナ及びシイ・カシに適した地域を色分けしたのが図2である。
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北部及び高地にブナの,南部及び海岸沿いにシイ・カシの適地があり,その中間に両者の混交する地域のあることが分かる。図1と図2の分布の差は,気候的に適地であってもまだ樹種の分布が到達していなかったり,過去の人為活動によって伐採されてしまった地域である。
入力者コメント:東北地方の平地はたいてい水田化されていますが、本来はブナ林の適地だったのですねえ‥。蝦夷が支配していた頃は、ブナ林だった訳です。
つぎに GFDLのシナリオに基づいて判別分析モデルで温暖化後のブナ及びシイ・カシの適地を計算したのが,図3であり,明らかにブナの適地が縮小している。
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これら2樹種及び両者と混交することが多いコナラについて温量指数との関係を見ると,寒い地域にブナ,暖かい地域にシイ・カシが分布し,コナラはあらゆる温量指数の地域に万遍なく分布していた。このため,ブナ林が気温上昇によって衰退した後に代償植生としてコナラ林が成立すると思われ,その結果を図4に示す。
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なお,遠い将来にはコナラ林はシイ・カシ林に代わると考えられる。
他の大気循環モデルである米国 NASA の GISS ,英国気象庁の UKMO のシナリオでも同じような結果になった(引用、終わり)。

 図が不鮮明で見づらいのですが、図4のような結果になるということです。つまり
(1)現在のブナ林の北限は北海道の長万部黒松内付近にあるが、温暖化    に伴って北限を北海道の中央まで広げることはない。
(2)衰退するブナ林にコナラが侵入し、コナラ林になって行く。
(3)コナラ林は、遠い将来には、暖かい地域からシイ・カシ林に置き換わって行   く。
 この論文も割と古いのですが、なるほど、そういうことになるのでしょうかねえ‥。現在なら気象モデルはもっと洗練されているのでしょうが、ブナ林をコナラが食って行くという構造は、変わらないのだと思います。ブナ林は保水力がありますが、コナラ林はそれほどではありません。ブナ林の林床植物は絶滅に瀕し、山は乾燥化することになるのでしょうか。
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資料:ブナ林観察ガイド
http://www.shirakami.or.jp/~fujisatofc/bunarinframe.html