毒餃子騒動 (10-1)外堀を埋める

この件についてはしばらく「日々是チナヲチ」の出店を続けています。
 以下に、その(10)をかいつまんで紹介いたします。

 内容にコメントある方は、直接、御家人さんにどうぞ。
よたコメントなら、ここでもいいですよ。
転載もと:http://blog.goo.ne.jp/gokenin168

中国で食中毒はデフォ、これ常識。・上
                中国毒餃子 / 2008-02-26 10:06:04

 いまなお日本を席巻中である「中国有毒食品」の外堀を埋めたいと思います。日本に輸出される中国食品について、中国側の管理は事実上ザルである、ということは先日のエントリーで紹介した通りです。

 ●有毒食品で中国「日系企業に落ち度」、前夜祭突入ワショーイ。(2008/02/23)
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 ●山東省の日系企業が製造したニラ肉まんと冷凍とんかつから有機リン系殺虫剤が検出された問題で、中国の国家品質監督検査検疫総局(質検総局)は2月22日、「原料野菜を仕入れる過程の検査が厳格でなかった」と発表、日系企業の生産管理に落ち度があったとの見解を示した。
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 ということでしたね。この一節からわかることは、第一に中国では残留農薬や発ガン性物質漬けの野菜や肉、魚などの「有毒素材」がごく一般的に流通・販売されていること。故意かどうかは別として、日系企業はそれを使ってしまったのです。それほど普通に「有毒素材」が売られていることが垣間見えます。

 もう一点は、質検総局がこの問題に「おれたちには責任ないよ」と平然としていることです。輸出される中国食品に対する安全管理を事実上,放棄していることになります。

 中国製品に対する中毒事件や有毒疑惑を懸念する声が世界的に高まっているなか、少なくとも食品については品質保証を行う立場の質検総局が仕事をしていないというのは、事実上輸出で生計を立てている中国経済の発展モデルを根本から揺るがす問題ではないかと思うのですが、大袈裟にいえば質検総局のこうした無関心・無責任といった鈍感さは亡国の兆なのかも知れません。
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 ところで、サッカー東アジア選手権のおかげで、私は最近、いつもの記事漁りの巡回ルートとは異なる中国本土のネット空間に出入るする機会が増えました。それで昔の血が騒いだのか(笑)、コソーリ活動(香港・台湾メディアでの文章発表)とは別に、記事収集の合間にちまちまとした活動を再開しています。

 ……といっても「論壇」(掲示板)に顔を出すほどヒマではありません。海外での報道を「論壇」にコピペして中国本土の「網民」(ネットユーザー)の知る権利を補完してやるならともかく、対話や討論といった作業は不毛かつ非効率的で徒労無益だと私自身は考えています。ですから、せいぜいニュースを拾うついでに記事に付随する掲示板にちょこちょこと書き込む程度です。

 いわゆるネット世論というのは日本が絡む問題になると乱痴気騒ぎになってしまいますが、純粋な中国国内の事件・事故の場合は社会の現状に対する問題意識をにじませる書き込みが多々あり、眺めているとなかなか面白いものです。

 「食の安全」に関しても同様です。毒餃子事件のニュースだと付随掲示板にも「反日」の気運が高まるのですが、中国国内での食中毒事件といった話題になると「当局の隠蔽体質」「安全管理の不備」それに「モラルの低さ」などを嘆き批判する書き込みが殺到します。まあ「モラルの低さ」については「お前が言うか!」とツッコミを入れたいところですけど(笑)。

 ただし、そういう場でも日本人として書き込むと「毒餃子事件」のような空気に変わってしまいますから、私は黙って眺めているか、どうしても乱入したければ「なんちゃって香港人」として登場するようにしています。……でも気分によっては日本人として乗り込んで、ちょっと絡んでみたりすることもあります(笑)。

 一昨日でしたか、恰好の事件が深センで発生しました。
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 ●工場で63人が中毒、2人死亡=毒性ある「ニセモノ塩」が原因か―広東省深セン市(Record China 2008/02/25/11:06)
 http://www.recordchina.co.jp/group/g16036.html

 2008年2月23日、新華社通信(電子版)によると、広東省深セン市の自動車メーカー比亜迪汽車(BYDオート)の従業員63人が、食中毒を起こす事件が発生した。すでに2人が死亡、3人が重体、19人が入院中。原因は化学工業原料で毒性を持つ「亜硝酸塩」と特定された。警察は「事件性が強い」として捜査を開始している。中国新聞社(電子版)が伝えた。

 事件が発生したのは23日午前。BYDオートの従業員が、工場入り口で無許可営業している食堂で朝食を食べた後、食中毒と思われる症状を訴えた。その数は63人にも膨れ上がり、うち2人が死亡、19人が入院という騒ぎに。警察は付近一帯の食堂を全て封鎖し、捜査を開始した。

 BYDオートの入り口付近には無許可営業の食堂が20数軒もあり、事件が起きたのはそのうちの1軒。警察は春節旧正月)前に全てを営業停止処分としていたが、春節明けには再び店が開かれていたという。

 広東省では数年前から、「ニセモノ塩」として工業塩の「亜硝酸塩」が大量に出回っており、毎年死者が出ている。省政府は昨年1月1日から、店頭で販売される食塩には「省承認ステッカー」貼付を義務付けるなど対策を講じていた。(翻訳・編集/NN)
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 ●中国・広東省で集団食中毒、2人死亡…無許可営業の軽食店(YOMIURI ONLINE 2008/02/24/18:29)
 ●中国:集団食中毒で2人死亡 亜硝酸塩、故意に混入か(毎日jp 2008/02/25/20:08)
 ●中国で63人が集団食中毒、2人死亡(asahi.com 2008/02/25/23:37)
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 原文はこちら。(中略)

 諸報道を総合すると、亜硝酸塩が故意に混入されたという説と、店舗の水か食品が亜硝酸塩に汚染されていた、と現時点では見方が分かれている模様。安かろう悪かろうとは知りつつも、低コスト追求で「有毒素材」を敢えて使っている店もあります。工場の社員食堂がそれをやって食中毒で工員多数が病院送りになるケースも珍しくありません。

 要するに、中国ではごくフツーの、よくある出来事。報道されただけマシ、とさえいえるかも知れません。このニュース、大手ポータルでは病院で治療を受ける被害者、といったお約束の写真のほか、取材を遮ろうとする男の姿などの画像も出ていて、付属掲示板では例によって「当局の隠蔽体質」「安全管理の不備」「モラルの低さ」などを叩く声が圧倒的でした。

「心配するな。食中毒でBYDの工員が死んだのはこれが初めてじゃない。前は報道されなかっただけだ」

 という地元在住者からの「タレ込み」もあれば、

「どうせ隠しているに違いない。死者は絶対4人以上はいる」

 と最初から当局報道を信じていない声があがる一方で、

「現在のところ死者の容態は安定している。現在のところ死者の容態は安定している」

 と、不謹慎ながら紋切型の記事を揶揄るものもありました。……さらには、
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 1.情報封鎖。外部に噂が流れるのを防ぐ。
 2.関係筋には上から下までカネをばらまいて被害状況を極力小規模
   な内容にするよう努める。
 3.メディア対策。CCTV(中央テレビ局)から地方局、また新聞から
   ネットの有力掲示板までしっかりと籠絡する。
 4.社内で思想動員会を開き、社員の口裏合わせを強制する。
 5.事件について発表する。
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 という書き込みも出現。これなら約20年前、私が上海に留学していたころのマニュアルと変わっていませんね。メディアが増えた分だけ現在は手間とカネが余計にかかる、といったところでしょう(笑)。
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 で、私はそのとき生憎「なでしこJAPAN」の優勝を喜んでハイになっていたのか、あるいは「中国足球」への怒りや日本サッカー協会への憤懣、また「毒餃子事件」をはじめとする中国食品問題とそれに対する中国側の不誠実な対応、そして日本政府のヤル気のなさと腰の弱さ、といったことにムカついていたのか。……ともかくこの事件の記事に付属した掲示板に「日本人」として軽やかに乱入してしまいました(笑)。

「請各位盡情享受安全無比的中國食品好了,劣弟不敢奉陪!呵呵。」

 みんな安全無比な中国食品を心ゆくまで味わってくれ。おれは勘弁させもらうけどな。呵々。……という意味で、「呵呵」をつけると燃料としてのオクタン価が高まります。案の定、すぐに一匹釣れました。

「中国は永遠にお前を歓迎しない。クズが!」

 そこで私もやり返します。

「中国が歓迎しないのなら、おれは中国に行かない。だから中国の安全な食品を食べることもない。これこそ長寿の秘訣というものだ。お前が来世は中国人に生まれないことを祈ってやるよ。呵々」

 とセオリー通りの反撃(笑)。すると串を刺しているのかどうかはわかりませんが、英国からのレスがつきました。ところが意外にも、

「日本の食品は確かに世界最高だ。食べてみればすぐわかる。道理で日本は世界一の長寿国な訳だ」

 ……と助太刀してきたので、バトルモードだった私は闘志をくじかれてしまいました(笑)。そう書かれてしまうと、いや最近はそうでもないんだ。メーカーのモラルが下がって偽装表示とか色々問題になっててさ。……と逆に書きたくなってその想を練っていたところ、今度はシンガポールからの書き込みで、

「全くその通りだ。日本の食品は確かに衛生的。シンガポールも悪くないよ。中国大陸のはホント勘弁してほしい。ハエが飛び回っているし売っているものもひどいし」

 と、味方が増えてしまいましたorz。このシンガポール君は中国から仕事か留学で現地に滞在しているらしく、

「畜生、帰国なんかしたくないのに。しかもよりによって、おれは4月から深セン(今回の事件の地元)で仕事するんだぜ……」

 などと別に書き込んで、深センを含む広東省の「網民」から叩かれていました(笑)。私はせっかく意気込んで「日本人」として登場したのに、何やら不完全燃焼。でも掲示板に寄せられた書き込みは面白いものばかりでした。ただし某巨大掲示板風にいえば、

「 ま た 食 中 毒 か ! 」

 といったところでしょう。あれこれ好き勝手に言い合いながらも、基本的には「当たっちまった奴らは運が悪かったんだろ」というノリで貫かれていた、という印象です。あくまでも私の個人的な感想ですけど。

(「下」に続く)
http://www.tokyovalley.com/yahoo_blog/article/article.php