毒餃子騒動 (10-2)外堀を埋める

この件についてはしばらく「日々是チナヲチ」の出店を続けています。
 以下に、その(10)をかいつまんで紹介いたします。

 内容にコメントある方は、直接、御家人さんにどうぞ。
よたコメントなら、ここでもいいですよ。
転載もと:http://blog.goo.ne.jp/gokenin168
中国で食中毒はデフォ、これ常識。・下
                中国毒餃子 / 2008-02-26 10:06:49
(「上」の続き)
 前述したように、日系企業もうっかり「有毒素材」を使ってしまうほどですから(その日系企業の安全管理にも疑問が残りますけど)、本当に珍しくも何ともないのです。一応、主に中国国内の記事を発信している通信社「Record China」のサイトから記事を拾ってみると、故意に毒を盛った事件を含め、「食中毒」がわんさか出てきました。
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 ●中毒死の家畜肉から漂白剤使用まで…!食品加工の違法行為、半年で2万3千件摘発―中国
 ●猛毒インスタントラーメンか?小学生4人、食べた直後に死亡―雲南省昭通市
 ●<中国食品><早分かり>度重なる即席ラーメンの中毒事件、廃油の再利用など悪質行為が横行
 ●<早分かり>取り締まり強化も止まらぬ殺そ剤中毒―小学生即席めん中毒死事件
 ●中学生が泡を吹いて突然死、またも食物による中毒か?―雲南省曲靖市
 ●雲南省で生徒248人が食中毒で入院、大部分は「集団パニック」―雲南省
 ●なぞの作業現場?!建設作業員、食中毒で17人が入院―北京市
 ●幼稚園で集団食中毒が発生、園児59人が入院―甘粛省武威市
 ●衛生検査無認可の社員食堂で集団食中毒が発生―海南省海口市
 ●予算をケチったから?自動車関連会社の44人が集団食中毒―広州市
 ●最悪の社員食堂、食中毒患者多発も会社は医療費支給を拒否―北京市
 ●市内の外資系企業で集団食中毒、11人が病院に!社員食堂の弁当か?―江蘇省蘇州市
 ●喧嘩で逆ギレ、病院食堂で毒物投与!無関係の患者ら42人が激しい中毒症状―江省嘉興市
 ●「仲間外れで同級生を毒殺未遂!」タリウム中毒の学生3人、北京に搬送―江蘇省徐州市
 ●硫酸流出による地下水汚染、中毒で数千人が入院か=地元では死亡説を否定―湖南省懐化市
 ●ヒ素中毒患者が続出、未処理の産業排水を河に流した悪質企業―貴州省
 ●<水>汚水が飲み水に混入!千人以上が中毒症状で病院に―遼寧省阜新市
 ●国道付近の用水路で塩素缶洗浄、住民62名が塩素中毒に―湖南省臨湘市
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 ……と、過去1年足らずの期間で、しかも「Record China」が取り上げた記事だけでも御覧の通りです(続報とかは省いています)。実際には中国国内メディアによるさらに多くの食中毒報道があり、また報道されない食中毒事件が中国で発生しています。

 要するに「中国で食中毒はデフォ」なのです。私たちは、中国食品がそういう環境で生産され、当局による管理がザル同然の状態で日本をはじめ諸外国に輸出されていることを覚えておく必要があると思います。

 ただし、このために「毒餃子事件」が日本で注目されたことについて、

「死者すら出ていないチンケな食中毒事件なのに、日本人は騒ぎすぎ」

 という反応はあまりみられません。「日本のメディアは騒ぎ過ぎる」という声は、主に中国当局から出ているものです。

 ●日本に国内世論制御を要求 中国高官、ギョーザ報道に懸念(MSN産経ニュース 2008/02/08/18:31)

 というニュースがありました。これも記事文中で書かれている通り、マイナスイメージが先行することで中国食品に対する評判がますます悪くなることを懸念したものです。そして、あくまでも当局によるリアクション。

 私が「毒餃子事件」に関する中国国内メディアの報道にネット上で接した限りでは、その付属掲示板にあふれ返っている声は主に、

 ●日本人の陰謀。自分で毒を入れて中国が悪いと騒いでいる。
 ●中国のイメージ悪化を日本が目論んでいるのだ。
 ●日本の右翼が北京五輪ボイコットを狙っているのに違いない。

 といったもので、日本のマスコミはそのために騒いでいる、という文脈で語られていました。「反日」先行型の反応です。「たかが食中毒でなぜそんなに騒ぐ?」という、ひょっとすると「反日」先行型よりある意味ずっと冷静かも知れない意見は見当たりません。……冷静という意味では、

 ●中国国内でもこれだけ食中毒が起きているから、輸出食品に問題があっても不思議ではない。
 ●中国当局の安全管理が甘いのではないか。
 ●工場の待遇が悪いんだろ。工員が毒を入れるくらいのことはする。

 といった声が少数派ながら存在し、それが「反日」先行型の「網民」たちからフルボッコにされているといった状況でした。簡単にいえば、「日本人の陰謀」(多数派)と「犯人は中国側」(少数派)の争いというのが基本。その中にごくわずかながら、

「これを機会に中国国内の食品安全管理体制を見直すべきだ」

 という提言や、

「中国側からは情報がまるで出て来ないじゃないか。いつものことながらうんざりだ」

 といった報道統制に対する批判が混じっていたりします。

 ともあれくどくなるのを承知でいえば、私たちの手元に届けられる中国食品は、「有毒素材」がごく一般的に流通し、「食中毒はデフォ」という環境のもと、そういう感覚をごく自然に持っている工場労働者や農家によって生産されていることを肝に銘じるべきでしょう。

  むろん、中国食品の全てが危険だといっている訳ではありません。ただ一般論としていえば、現地で品質管理を担当する日本人にスキがあれば「有毒素材」が紛れ込んでも全く不思議でない環境にあることは確かです。日本人が張り付いていない工場などはもってのほか。

 中国サイドがそういう状況にある以上、日本側としては政府がチェック機能を強化し、あとは消費者ひとりひとりが自衛策を講じるほかないでしょう。こればかりは構造的な問題ですから、「毒餃子事件」の真相が解明されても私たちが警戒を緩める訳にはいきません。
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 最後に「毒餃子事件」関連の最新情報を並べておきます。

 ●中国製ギョーザ中毒:JT、冷凍食品の中国企業委託を原則廃止 自社グループに集約(毎日新聞東京夕刊 2008/02/23)
 ●ジクロルボス、中国製冷凍天ぷらから ユーコープ(asahi.com 2008/02/24/07:00)
 ●中国製ギョーザ中毒:パラチオンも再検査で検出--福島のギョーザ(毎日新聞東京朝刊 2008/02/24)
 ●微量のメタミドホス検出 日本生協連共同通信 2008/02/25/18:32)
 ●冷凍食品の原産地表示を義務化へ 都条例(MSN産経ニュース 2008/02/26/02:30)
 ●警察庁次長が北京入り 中国製ギョーザ事件(MSN産経ニュース 2008/02/25/18:50)
 ●中国公安省次官と警察庁次長、ギョーザ捜査加速化で合意(YOMIURI ONLINE 2008/02/26/01:18)
 ●中国側、条約の発効エサに幕引き画策…毒ギョーザ事件 25日に急展開も(ZAKZAK 2008/02/23)
 ●中国警察当局、週末も捜査継続 ギョーザ事件(asahi.com 2008/02/24/20:02)
 ●犯罪歴ある6人を集中捜査 中国製ギョーザ事件(共同通信 2008/02/25/18:27)
 ●中国警察、天洋に最多の捜査員 集中的に従業員聴取(asahi.com 2008/02/26/07:43)
 ●中国当局、「工場内で混入」なお視野に捜査・ギョーザ中毒事件(NIKKEI NET 2008/02/26/01:41)


 まずは事件の真相解明を第一に、安易な政治的決着という形だけは避けて欲しいところです。

 中国側は役人同士の縄張り争いとある種の思惑があるのか、部門間の足並みが揃っておらず、好き勝手にバラバラに動いているという印象を受けます。

 天洋食品に対するスタンスが質検総局と公安部(警察)では明らかに異なりますし、事件そのものから一刻も早く解放されたいという気配を示す質検総局に対し、オリンピックへの影響を懸念する北京市がそれぞれ同じ時期に違う方向を向いた記者会見を開いているのも興味深いところです。

 「解放されたい」質検総局が無闇やたらと報道管制を行ったことに中国国内メディアが反発して共同電を流し、質検総局が慌てて報道否定会見を開く、といった混乱もありました。

 目下のところ、こうした動きを統一させようという空気も、例えば党中央あたりからは漂ってきません。露払いに唐家セン・国務委員を訪日させたくらいですから、こと対日問題といえば、頭の中は胡錦涛訪日でいっぱいなのかも知れません。

 ただ目下のところ日中間における最大の懸案のひとつといえる東シナ海ガス田問題について、次官級協議も物別れに終わっており、胡錦涛訪日で事態が劇的な展開を迎える可能性は低くなっています。

 国家主席の訪日は1998年の江沢民以来で、共同文書のようなものを発表したいという思惑が中国側にはあるようですが、その内容も台湾総統選挙という変動要因を横にらみにしつつ詰めていかなければなりません。

 そうしたことに比べれば、党中央にとって毒餃子事件などは些末な問題と考えているのかも知れません。だとすればこの問題は長期化する可能性もあるのですが、ここに来て中国側・公安部門の動きがにわかに慌ただしくなっているのが気になります。……ともあれ、

 ●中国当局は早くも捏造を開始。
 ●日本のマスコミの多くがそれに足並みを揃えた。
 ●中国側はこれを日中間だけの問題に限定したい。
 ●限定した上で、毒餃子があくまでも「シロ」だといい続ける構え
  (可能ならば迷宮入りで鎮静化させたい)。
 ●さらに「これを政治問題化するのはおかしい」と問題点を
  すり替える。
 ●一方では対外的に「中国食品は安全」キャンペーンを展開するかも。

 ※犯人が中国側から出る場合は「例外的な事件」と強調しつつ即逮捕
  即裁判即判決即執行。

 という当初のゲームプラン(私見ですが)を中国側は依然として改めてはいないようです。不覚にも初動からそれに乗っかってしまった日本側は、警察(現場)の奮闘である程度挽回してきてはいます。少なくとも「迷宮入り」は回避して、現時点では中国側から犯人が出るところまで持ち込めるかどうか、といった段階まで巻き返しているように思います。

 ただし、繰り返しになりますが悪くすれば政治的解決が図られるかも知れない警察庁次長の訪中が行われており、しかしながらそれにタイミングを合わせるかのごとく、逆に中国公安部門の天洋食品に対する捜査が厳しさを増しています。事件がひとつのヤマ場を迎えつつあることは確かなようですが、膠着状態から一転……という可能性をはらみつつ、依然として予断を許さない状況が続いている、としか今はいうことができません。

 これまたくどくなりますが、たとえこの事件が解決したとしても、中国食品の危険性という構造的問題には大きな変化は生まれないでしょう。結局のところ、私たちひとりひとりの意識と行動が問われている、ということになるのです。
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