民主主義と社会の劣化

 佐伯啓思 「民主主義進展と政治の低下」
引用元:http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090913/stt0909130255003-n1.htm
 先ごろの総選挙での民主党の圧勝を受けて政権交代が実現した。多くの人が画期的な選挙だったという。
民主党政権運営や政策実行に、かなりの不安感をもっている人でさえ、「政権交代」そのものは結構なことだという。何が結構なのかというと、政権交代によって民意が政治に反映されるからだ、という。つまり、民主主義の進展だというのである。

 政治に一家言ある一般人だけではなく、政治学者や政治評論家までがこんな議論をすると、私など、ついあまのじゃく根性を発揮したくなってくるのだ。「で、民主主義が進展すれば政治は良くなるの?」と、つい口がひとりでに動いてしまう。誰もが、民主主義が進展すれば政治は良くなると思っている。逆にいえば、今の日本で政治がうまく作動しないのは、民主主義が機能していないからだ、というわけだ。

 民主主義とは、確かに、民意によって動く政治である。しかし、民意というものが人々の顔に書いてあるわけではないから、政党政治のもとでは、政党が政策を示し、それを「民意」が判断する、という手続きになる。そこで、たとえば、二大政党がそれぞれ政策を提示して、人々に選択権を与えれば、民意が反映されたことになるだろう。かくて、マニフェストによる政策選択が同時に政権選択になる、という理屈がでてくる。

 この理屈に別に間違ったところはない。だが、ひとつ重要なことが隠されている。それは、「民意」は必ずしも「国」のことを考えるわけではない、ということだ。むろん、「民意」とは何か、というやっかいな問題があるが、今はそれは論じないことにしよう。民意とは、さしあたりは、多様な人々の意見や利益を集約したものだとしておこう。仮にそう定義しておいても、民意とは、まずは、人々の「私的」な関心事項の集まりなのである。

 そもそも、近代社会になって民主政治が支配的になった理由を考えてみよう。いうまでもなく、近代社会のもっとも重要な価値は「自由」にある。「自由」といえば崇高に聞こえるが、ありていにいえば、人々は自分のことにしか関心をもたず、勝手に利益を追求してもよい、ということであろう。こういう社会では、人々の多様な「自由」=「勝手」を調整するには民主政治しか手がない。

 だとすれば、「自由・勝手・気まま」から構成される「民意」が、はたして「国」の行く末を冷静に考察した結果だなどとするのはあまりに能天気に過ぎるだろう。
人々が関心をもつものは、何よりも、自分の身の安全、安定した生活、利得を得る機会である。要するに、身の安全が確保されれば、後は、物価が安く、給料があがり、ちょっと小銭がかせげればそれでよい。確かに、ずいぶんと人をバカにした話に聞こえるが、実際、それこそが、近代社会の政治的了解だったのではなかろうか。

 近代国家の役割とは、何よりも、人々の生命の安全確保、生活の安定、社会秩序の維持にこそある、というのが政治学の教えるところなのである。この考えからすれば、「民意」が、国家の大計や国の行く末などという「大きな政治」に関心など持つ方が奇妙なことなのである。
では,「民意」とはそうしたものであるとして,果たして「民意」の望む社会が来るのであろうか?

 以下,「株式日記と経済展望」コメント欄より引用。
 http://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/7cb311cfa050be9423e4288872f6549e
 地獄の果てに・・・ (こってり) 2009-09-10 20:59:53
 今の民主党政権の末期には、社会情勢は今より悪化している可能性が高い。
 そして、国民に愛想を尽かれた民主党に変わり、自民党が政権に座についても、それは旧来の体質のママの自民党であり、その自民党政権も失策を重ね、状況は更に悪化して行く・・・

 勿論、民主党の政策が効果を発揮し、自民党も再生して、両党がより良い政策を国民に訴えて政権を争い、結果として国民の暮らしがより良くなって行く・・・というシナリオも有りだが、今の両党の状態を見る限り、とてもそのような良いシナリオは思い浮かばない。
 結局、国民は自力で自己と家族を守るしか道は無く、守れなかったものは滅んで行く・・・という過酷な世の中となり、社会が本当に変革を始めるのはその地獄の果てのことだと覚悟している。

 同感 (太郎) 2009-09-10 21:10:52
 国内は大混乱になるだろう。

日本はあらゆるものが自己責任で何も小泉氏が初めて言い出したわけではない。社会組織のある種の位置にいる時だけ、社会扶助、もしくは社会の機能の手助けがあるが、それを外れると。全くない。そして大多数の人が社会組織の変化によって、外れた人になる。

 その見本は自民党についていた、人々だろう。
 今後社会組織、及び制度は大敗した自民党のようになるから、議員秘書の位置にいた人と同じような位置に国民の大多数がつく。

 北朝鮮に拉致された人や、残された家族と同じ位置につく人々が殖える。

 ヒットラー (太郎)2009-09-10 20:36:30
 私は<我国は何が我国の問題かが分からない状態>が続くとおもう。そしてそれは昭和の初めとよく似た状態になると思っている。
 それにしても選挙結果には魂消た。これほど勝つとは思っていなかった。一体日本人は何を考えているのだろうか。
 例によって国民は民主党に勝たせたとは思っていない。が,民主党は勝った。そして何かをしていくがそれは国民が民主党を勝たせたことによって、望んだ方向とは異なるだろう。

思えば憲法改正アメリカ軍を我国から追い出す)を理念として結党して、1960年において岸内閣が退陣して池田内閣が所得倍増政策を実行して、世界が予測した以上に経済が発展して、理念を忘れた。
 そして1970年を迎えた。その後は日米安全保障条約が通告後一年で失効する状態になった。
 そのとき非核三原則沖縄返還に絡んで、明言した。このとき自民党は変質した。(入力者注・三島由紀夫が演説して自決し,世の中は何も変わらなかった。)そして今日の事態を迎えた。起死回生の時は北朝鮮が核実験をしたそのときであった。
 それも過ぎた。

 それにしても今回の選挙は国防問題が争点にはならなかった。何故であろうか。
 今後の日米関係は錯綜して、混乱を極めるだろう。
 三島由紀夫檄文
 http://www.geocities.jp/kyoketu/61052.html
 三島由紀夫演説文
http://www.geocities.jp/kyoketu/61051.html